リスクマネジメントの4つの対応(回避、移転、保有、低減)を、マルウェアのリスクを例にして具体的に説明します。
1. 回避(リスクを避ける)
例題
ある企業では、社員がインターネットを自由に閲覧できる環境にある。しかし、悪意のあるWebサイトにアクセスするリスクがある。
対応
- 企業はインターネットの使用を全面禁止し、社内ネットワークを外部と完全に隔離(エアギャップ)する。
- 結果として、マルウェア感染のリスク自体を回避できるが、業務の利便性が低下する。
⇒ リスクそのものをなくす対応策
2. 移転(リスクを第三者に移す)
例題
企業のサーバーがマルウェアに感染した場合、自社で対応するにはコストがかかる。
対応
- サイバーセキュリティ保険に加入し、マルウェア感染時の復旧費用や損害賠償費用をカバーできるようにする。
- もしくは、セキュリティ対策を専門の外部企業に委託し、自社で直接対応しなくてもよい環境を作る。
⇒ リスクの影響や対策の責任を他者に委ねる
3. 保有(リスクを受け入れる)
例題
社員の個人PCに対して、会社がすべてのセキュリティ対策を行うのはコストがかかるため、一部のリスクは許容することにした。
対応
- 会社は最低限のマルウェア対策を行うが、社員が自己責任でセキュリティ管理をすることを求める。
- たとえば、従業員が使う個人スマホのウイルス感染リスクを認識しつつも、会社としては特に制限を設けない。
⇒ リスクを認識しつつも、コストや利便性を優先して受け入れる
4. 低減(リスクを小さくする)
例題
企業は従業員のメール経由でのマルウェア感染リスクを懸念しているが、完全になくすことは難しい。
対応
- メールフィルタリングシステムを導入し、怪しいメールを自動でブロック。
- 従業員向けに定期的なセキュリティ研修を実施し、不審なメールの開封を防ぐ。
- ウイルス対策ソフトを導入し、定期的にスキャンを実施。
⇒ リスクの発生確率や影響を最小限に抑える
まとめ
リスク対応策 | マルウェアの例 |
---|---|
回避 | 社内のインターネット利用を禁止し、外部ネットワークから隔離する |
移転 | サイバーセキュリティ保険に加入、または外部の専門企業にセキュリティ対策を委託 |
保有 | 一部のリスクを認識した上で、従業員の自己責任で管理 |
低減 | メールフィルタリングやセキュリティ研修を行い、マルウェア感染のリスクを最小限に抑える |
どの対応を選ぶかは、企業のリスク許容度(受容水準)やコスト、利便性とのバランスを考えて決めることが重要です。