RAID0(ストライピング)の価値低下
RAID0は、昔はHDDのパフォーマンスを向上させる手段として有効でしたが、現在ではそのメリットがほぼ消えています。
1. SSDの普及によりRAID0の恩恵が減少
- かつてはHDDのランダムアクセスが遅かったため、RAID0による並列アクセスで速度向上が期待できました。
- しかし、NVMe SSDの登場により、単体でも十分高速になり、RAID0の恩恵はほぼ消えました。
- さらに、RAID0は冗長性ゼロのため、リスクが高い(1台でも壊れると全データ消失)。
2. ソフトウェア的な高速化技術の発展
- OSやアプリケーション側でキャッシュやプリフェッチの最適化が進み、ストレージの物理的な速度向上が必要な場面が減少。
- PCIe Gen4/Gen5 SSDの登場により、単体で数GB/sの速度が出るため、RAID0での速度向上はもはや不要。
RAID5の価値低下
RAID5はかつて「データ保護+ストレージ効率+速度向上」のバランスが良い選択肢とされていましたが、現在ではデメリットが目立ちます。
1. RAID5のリビルド時間が長すぎる
- HDDの大容量化(例:8TBや16TB)が進むと、RAID5のリビルドに数日~1週間以上かかることも。
- リビルド中はRAIDアレイが不安定になり、再度HDDが故障するリスクが高まる(通称「リビルド中のセカンダリ障害」)。
- SSDでRAID5を組んでも、書き込み負荷が高く、耐久性に影響。
2. RAID5の性能低下
- RAID5は書き込み時にパリティ計算が必要なため、特にHDD環境ではランダムライト性能が低下しやすい。
- これもNVMe SSDの発展により、単体SSDの速度が圧倒的に速いため、RAID5のメリットが少なくなった。
3. RAID5の耐障害性は過信できない
- 1台のHDDが壊れても復旧できるが、リビルド中に別のHDDが故障すると全データ消失(HDDは同時期に導入されることが多く、壊れるタイミングが近くなりやすい)。
- データ保護ならRAID1やバックアップのほうが現実的。
RAID1のメリット
現代の環境では、RAIDを導入する理由が「データ保護」にあるなら、RAID1が最もシンプルで現実的な選択肢になります。
1. シンプルで信頼性が高い
- ミラーリング(完全コピー)なので、片方のディスクが壊れてもそのまま動作可能。
- RAID5のようなリビルド時間の長さもなく、故障時の対応が容易。
2. リカバリーが簡単
- もしRAIDコントローラーやRAIDソフトウェアに問題が発生しても、RAID1なら片方のディスクを単独で読み出せる可能性が高い。
- RAID5のようなパリティ計算が不要なため、RAID管理ツールなしでもデータを救出できることが多い。
3. 小規模オフィスや個人利用ならRAID1で十分
- RAID1+定期バックアップの組み合わせで、コストを抑えつつデータ保護が可能。
- RAID5のような複雑な構成を避け、運用をシンプルにできる。
RAID10の価値はまだある
RAID10(RAID1+RAID0の組み合わせ)は、RAID1のメリット(冗長性)とRAID0のメリット(速度向上)を兼ね備えています。
ただし、HDD環境では有効だが、SSD環境ではそこまで恩恵がないため、用途は限られます。
RAID10のメリット
- RAID1と比べて書き込み性能が向上する
- HDD環境ではRAID5よりリビルドが速く、安全性が高い
- 最低4台のディスクが必要なので、コストは高くなるが、大規模システムでは選択肢になり得る。
結論
✅ 現在のストレージ環境では、RAID1が最も実用的な選択肢
✅ RAID0の速度メリットはSSDで不要になり、RAID5のリビルド問題で価値が低下
✅ HDD環境ならRAID10がまだ選択肢として有効だが、SSDなら単体運用のほうが合理的
✅ 最適解はRAID1+定期バックアップ(クラウドや外部ストレージ)
現代では、RAIDの代わりにクラウドバックアップ・ZFS・ストレージレベルのデータ保護機能(スナップショット・冗長化)を活用するのが主流になりつつあります。特に小規模システムではRAID1で十分、それ以上を求めるならRAID10よりもバックアップ戦略を強化するほうが賢明かもしれませんね。