25年以上、パソコンの部品を取り扱ってきましたが、昔と違い、現在では相性問題と呼ばれる現象は、私の知る限りほとんどありません。しかし、量販店や一部のショップで、専門的な知識を持たないスタッフが「相性かもしれませんね」と安易に口にし、目の前の問題(お客様が困っている状況)に向き合わずに逃げてしまうことがあります。
お客様にとって「相性問題」という言葉は曖昧であり、根本的な原因解決にはなりません。そこで、技術者として適切な対応をするために、しっかりと説明しておきたいと思います。
「相性の問題ですね」と片付けることの問題点
技術力が不足したサービスマンが、根本原因を調査せずに「相性の問題ですね」と結論づけるのは、以下の理由で適切ではありません。
- 実際にはハードウェアの不具合や設定ミスである可能性が高い
例)メモリの規格違い、電圧やクロック設定の不一致、BIOS設定の問題 - エビデンス(証拠)なしに推測で問題を決めつけるのは誤った対応
技術者としては、データや検証結果を基に判断すべきであり、憶測だけで説明するのは不適切です。 - 顧客にとって納得できない説明になり、サービス品質が低下する
「相性問題」と言われるだけでは、解決策が提示されず、納得感のない対応になってしまいます。 - 問題解決プロセスの標準化がなされていないため、同じトラブルが繰り返される
体系的なトラブルシューティングが行われなければ、同様の問題が発生した際に適切な対応ができません。
JIS Q 20000がこうした問題を防ぐ方法
JIS Q 20000(ISO/IEC 20000-1)は、ITサービスを適切に管理するための標準規格であり、問題解決のプロセスを体系的に整備することを目的としています。以下のような管理プロセスを活用することで、技術者としてより適切な対応が可能になります。
インシデント管理(Incident Management)
顧客からの問い合わせ(例:「メモリが認識しない」)を適切に記録し、問題を分類・分析する。 「相性問題」と断定する前に、技術的な診断プロセスを実施することが求められる。
問題管理(Problem Management)
繰り返し発生する問題を調査し、**根本原因(Root Cause)**を特定する。 「相性」と言い切る前に、ファームウェアのアップデートや、他のメモリでの動作確認を実施する必要がある。
変更管理(Change Management)
互換性の問題が実際に発生する場合、ファームウェア更新やBIOS設定の変更を管理するプロセスを整える。
知識管理(Knowledge Management)
過去の事例やトラブルシューティング情報を蓄積し、「相性」という曖昧な説明に頼らず、データに基づいた根拠のある回答をする。
結論
JIS Q 20000のようなITサービスマネジメントの標準を導入することで、「技術不足のサービスマンが安易に相性の問題と言ってしまう」状況を防ぐことが可能です。
適切なトラブルシューティングのプロセスとエビデンスに基づいた対応を求める仕組みを整えることで、サービス品質を向上させることができます。
「相性」と言って済ませるのではなく、以下の手順を踏むべきです。 ✅ メモリの規格や仕様の確認(メーカー推奨リストとの照合)
✅ 動作環境のチェック(BIOS設定、電圧、クロック)
✅ ファームウェアの更新(マザーボードの互換性改善)
問題に対して正面から向き合い、根拠に基づいた技術的な対応を行うことが、プロフェッショナルなサービスマンのあるべき姿ではないでしょうか。
✅ 動作環境のチェック(BIOS設定、電圧、クロック)
✅ ファームウェアの更新(マザーボードの互換性改善)
など、技術的に正しいアプローチを求めることが重要です。
同業者さんにこの記事が届くように。